読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

にじいろ梅にっき

たかぎなおこさんのコミックエッセイをこよなく愛するゲイが読んだ本の感想とかをだらだら書いてるブログです。

書評:ルポ 同性カップルの子どもたち――アメリカ「ゲイビーブーム」を追う

ルポ 同性カップルの子どもたち――アメリカ「ゲイビーブーム」を追う

こんにちは、梅です。アクセス解析を見ていると、「たかぎなおこ」というキーワードからこのブログにたどり着いてくださった人を初めて観測できて、すごくうれしくなってしまいました。

ですが、今回はたかぎさんとは全く関係のない、杉山麻里子さんのこの本を取り上げたいと思います。

同性カップルのもとで育つ「ゲイビー(ゲイとベイビーの掛詞。ちなみに、gayという単語を形容詞で使う場合、必ずしもゲイ男性だけでなく、レズビアンなども含むみたいですね)」の数が急上昇中のアメリカ。著者自身は男性と結婚をしている女性のようですが、彼女がアメリカに住んでいた時、自分の息子の親友がゲイカップルの子どもであったことから、子育てをする同性カップルに関心をもつようになり、この本の執筆に至ったということです。

私自身、ゲイ男性として同性カップルの子育てにはすごく興味があります。中高生のときは、「女の人と結婚しても幸せにはなれないだろうし、ずっと1人で過ごして1人で死んでいくんだろうなー」なんて思っていたものですが、ゲイカップルどうしで子育てができるようになるのだから、世の中というのは変わるものですね。

私が少し前にアメリカ東海岸の某都市を訪れたとき、ゲイのカップルにとてもよくしてもらったのを覚えています。彼らは数年間一緒に過ごしていたものの、まだ結婚はしておらず、子どももいないという状態でしたが、「親からいつも子どもはまだかと聞かれる」とか、「カップルの片方の父が介護が必要な状態のため、月に2回車で数時間かけて二人で父のもとを訪れている」というようなことを聞いて、家庭をつくるということはそれにまつわるいろんなものを背負うことでもあるんだなあ、と思ったりもしました。

この本の中で紹介されているように、アメリカで同性カップルが子育てをする場合、彼・彼女らが子どもを“もつ”方法にはいくつかあります。以前に異性のパートナーと子どもをもうけた後にそのパートナーと別れ、新しく結ばれた同性のパートナーと一緒に育てるケース。養子を迎える場合。女性どうしのカップルでは、精子バンクや知人男性の精子を使ってどちらかが妊娠・出産をするケース。そして、男性どうしのカップルではサロガシー(代理出産)による場合、などなど。

この中でも、特に倫理的な議論を呼びやすいのが生殖医療・ビジネスを利用したものでしょう。精子バンクのウェブサイトで購入できる、父親の人種や学歴によって値段が違う精子。子どもを持とうとするゲイカップルが集まる会において、代理母不在のまま、「私たちは今妊娠20週です」などと手を取り合って語るゲイカップル。もちろんこれらは異性カップルが生殖医療を利用する際にも起こりうることですが、いずれにせよ(いまの私には)多少の違和感は禁じえません。

昨年アメリカの最高裁同性婚の禁止を違憲とする判決が下され、全州で同性婚が可能になったのと比べると、日本の状況は進歩しているとはいえ少し淋しいものがあります。そしてお得意の「伝統的な家族観(それはおそらくちっとも伝統的ではないのだけれど)」の存在を考えると、日本で同性カップルが子育てをするのはまだそれほど簡単なことではなさそうです。

やはり、当事者の存在がまわりに認識されていくことがとても大きな力になるのではないでしょうか。

下の動画も本の中で紹介されていたものです。アメリカアイオワ州で、人工授精を利用してレズビアンカップルのもとに生まれ育てられた19歳の青年が、同性婚の是非をめぐる裁判において、同性カップルにも男女の夫婦(なんだか変な表現ですが)と同じように子育てができることを堂々と証言しています。元の英語の動画は現時点で1900万回近く再生されており、当事者が自分の言葉で語ることの影響の大きさを感じます。また、同性カップルのもとに育てられた子どもを対象とした大規模な統計学的調査においても、子どもの発達に異性カップルの子どもと差はないことが示されているようですね。

彼が"We're Iowans"ってことを何度も強調するあたりには(裁判所でのウケを狙って、ということなのかもしれませんが)アメリカのパトリオティズムみたいなものをなんとなく感じられて面白かったりもします。

 

www.youtube.com

 

私自身、子育てをしてみたい部分はありますが、それは極めて大きな責任を伴う営みでもあり、今の自分にはそこに踏み出す度胸はありません。ただ、いつか子どもがほしいという気持ちが本当に大きくなった時、ゲイである自分にも選択肢があるのはとても素敵なことだと思いますし、それが実現するように微力ながら尽力できたらいいな、と考えています。

ではまた。

 

ルポ 同性カップルの子どもたち――アメリカ「ゲイビーブーム」を追う

ルポ 同性カップルの子どもたち――アメリカ「ゲイビーブーム」を追う